就職する前に大学生が一人旅に出た理由 / 高橋巧


高校時代はサッカー強豪高で全国大会を目指していた高橋巧くん。大学では社会人チームでプレーしながらスクールコーチとしても子供達の指導にあたっています。大学卒業を控え、就職の内定も決まり、夏休みを利用したベトナム・カンボジア・タイ・ラオスの一人旅に出た高橋くん。彼に今回の旅に出たわけを聞いてきました。

 

東南アジア一人旅

今回ひとり旅に出ようとしたきっかけは何だったのですか 

海外には以前にも何度か行ったことがありましたが、今回の旅では国として発展しきっていない東南アジアの国々を見たいと思っていました。行ってみたいという単純な好奇心はもちろんありましたが、東南アジアの国々にどんなビジネスチャンスがあるのか見てみたかったんです。それで、移動の便利さや航空券の値段なども考えた結果、ベトナム、カンボジア、タイ、ラオスを回ってみようということになりました。 

 就職先は決まっている中でそういうビジネス的な視点で国を見て回りたいと思った理由 

海外で仕事をしたいというのは昔から思っていたことでした。貧しい国の人たちをボランティア活動で支援するという人も多くいますが、自分としてはしっかりとビジネスとして成立させなければそういった活動も広がらないと思っています。なので、実際に先進国でないからこそ成り立つビジネスなどがあるのかなという興味もあり、現地で活躍するビジネスマンなどにアポを取って直接話を聞いてみることにしたんです。大学では経済学部で学んでいたということも大きいかったですね。 

自分が全く知らない世界があることを知った

そんな思いで一人旅をしていたんですね。そう考えたきっかけには何があったのですか? 

高校を卒業した後、イングランドのリバプールに短期ですが語学留学に行きました。その時のクラスメイト達はアフリカ出身や南米出身の人が多く、彼らの多くは自国では大きなキャリアアップが望めないため、英語を学んで世界で自分のキャリアを築いていこう、という強いモチベーションを持った人達でした。

また、2010年から始まったアラブで起きた大規模な反政府デモ『アラブの春』でリビアから逃がれて来たリビア政府の人たち。彼らの息子達が同じクラスにいたんです。 

彼らと過ごした時間は長くはありませんでしたが、彼らから聞いた話は自分には衝撃的なことばかりでした。彼らは自分の国を助けたい、良くしたいという明確なビジョンを持っていて、それを果たすために自分が英語を学んで世界で働けるようにならないといけないという思いで英語を学びに来ていました。

そして、国を追われてやって来た彼らの感じている事は自分には想像もつかず、自分が全く知らない世界があるのだとその時肌で感じました。自分ももっと世界を知らなければいけない。外に出てもっと色々学びたいとその時から強く思うようになりました。 

イングランドでの留学は相当なインパクトがあったんですね。 

 そうですね、あの時はたったの2週間という期間でしたが自分が感じたもの、経験はその後に大きく影響したと思います。それまではサッカー一筋でそれ以外のことにはほとんど興味もなかったのですが、イングランドでの経験はもっと広い視点から物事を考えるようになったきっかけになったと思います。あの時の経験がなければ今こうして色々な世界を見てみたいと思うこともなかったはずです。 

日本に帰って来てから大学での過ごし方などはどうでしたか? 

 自分の国のために働きたいという強い思いを持った同世代の人たちに出会ったことで、自分も人のために何かできないかと考えるようになりました。その中で、発展途上国の人々のために何かできないかな、という興味も出てきました。周りの友人も『将来はNPO団体で働きたい』『青年海外協力隊として困っている人々のために働きたい』という思いを持った人たちは多かったですね。

やっぱり大学にいると色々な人がいるので、自分はできるだけそういった人たちといるように心がけていた部分もありました。将来を見据えて行動に移している人とそうでない人では学生時代の過ごし方も大きく違ってくると思うので。 

 内定は既に決まっていると聞きましたが、海外で働きたいという思いも持っているんですよね?

今はこれといって固まったビジョンがあるわけではないのですが、まずはしっかりと内定を頂いた会社で働いて社会経験を積みたいと考えています。社会人としての基本がなければ海外に出ても何もできないと思うので。 

そして今は地元の社会人サッカーチームに所属しています。そこには色々な方々が参加されていますが、自営業で働いている方達が楽しそうに仕事もサッカーもしているのを見て、自分も将来そうなれたらなと思っています。もちろん今すぐにはできませんが、そういったことも将来的には興味があります。もちろんそれは、海外で自分が本当にやりたいことができればと思っていますが、その将来の自分のために少しでも世界を見ておこうと思い今回の旅に出ました。 

 なるほど。常に自分がやりたいことをしっかりと見据えて行動していているんですね。今は何かアルバイトなどはしているのですか? 

サッカースクールのコーチをしています。内定を頂いている会社はサッカーとは何も関係はありませんし、一時期はサッカーとは全く関係のない分野で生きていきたいと考えていたのですが、コーチの仕事を通して子供達と触れ合っているうちにやはりサッカーに携わる仕事をしたいという気持ちが芽生えてきました。なので、ベトナムでは現地でサッカースクールを営む日本人の方にも会って色々と話を聞いてきました。 

東南アジアで活躍されているビジネスマンの話を聞いて周る中で、自分が考えていたようなビジネスをやっている人が多いことに驚きました。自分からもっと動き出さなければ、同じことを考えている人はたくさんいるんだなと強く感じましたね。自分も行動に移さなければいけないなと。 

この旅で感じたこと

 

この旅でここまで見てきたベトナム、カンボジア、タイはどうでしたか? 

ホーチミンは大規模な工事をしている場所がたくさんあり、国としての成長・パワーを感じました。地下鉄も工事中でこれから都市として国としてももっと大きくなるのだろうなと。カンボジアのシェムリアップは一切近代化ということに関して興味が無いように感じました。観光客エリアとローカルエリアが別れているのも興味深かったですね。観光客エリアでは英語が共通語のようになっていましたが、少し離れると英語も挨拶すら全く通じないようになる。当たり前に使えていたドルも使えなくなります。 カンボジアの中なのに店員以外のカンボジア人がほとんどいない、シェムリアップはそんな場所でした。 

しかし、その中でカンボジアの田舎の人たちの温かさはとても印象に残りました。彼らはお金は無いのかもしれませんが、皆幸せそうでしたし、楽しそうに生活していました。経済的に言えばたくさんのお金が動いた方が国としては良いのかもしれませんが、経済成長と実際の幸福度は必ずしも比例しないのだなと感じました。笑顔で楽しそうに暮らす彼らからは貧しそうな雰囲気は一切感じませんでしたね。 

ひとり旅では感じることもより多くなりそうですね

イングランドのリバプールで出会った友人の一人でマドリッドの大学に通っている友人が一人います。彼はベネズエラ出身で森林伐採により減少が進む自国の森林を守るための研究をしているそうです。そういった確固たる目的を持って海外で頑張る人を知っているから、同じ大学で大手の企業に入るために就活対策をしたり、履歴書に書くために海外留学などをしている人を見ると、自分はもっとやらなきゃいけないなという気持ちになります。それが悪いわけではないけど、自分がやりたいことをしっかりと見つめてやっていきたい。やっぱり日本は恵まれているから。それに気づかないくらい恵まれていますからね。そういったことも今回の旅でより感じています。 

 今後のことを少し聞かせて下さい 

昔は高校サッカー選手権の全国大会に出場したいだとか大学サッカーで活躍したいというような大きな目標を掲げてそれに対して頑張っていました。しかし、今はあまりそういった大きな目標は掲げないようにしています。将来的にサッカー関係の仕事に興味はありますが、目の前の出来ることを積み重ねて行きたい。そこだけに集中したいと思っています。 

編集後記

バンコクにいるとよく見かける学生同士の旅行者。彼らとは明らかに違った彼の眼差しが印象的でした。旅をする時にその旅で『何を見たいのか・何がしたいのか』それをしっかりと自分で理解していることは、旅をより実りあるものにしてくれます。目的をしっかり理解して、行動に移すこと。そうすることで旅も人生もより素敵なものになる、彼の言葉を聞いていて感じました。
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