U23タイ代表のピチャが徳島ヴォルティスの練習に参加中
タイリーグ1のパタヤ・ユナイテッドに所属するピチャ・ウトラーが4月13日から19日までの1週間、J2徳島ヴォルティスの練習に参加している。
ピチャは96年生まれの22歳。U16世代から世代別代表にも選出され、2017年には東南アジアのオリンピックと言われるSEA GAMEやAFC U23選手権にもU23タイ代表の一員として参加した、タイで最も将来が期待される若手選手の一人だ。

2014シーズンに国内屈指の強豪ムアントン・ユナイテッドでプロキャリアをスタートさせたピチャは、同年3部リーグに当たる(当時D2)ナコンナヨックFCにレンタル移籍。そこで出場を重ね、2015シーズンにタイプレミアリーグのパタヤ・ユナイテッドへと移籍した。
リーグ戦でも対戦経験のあるウボンUMTユナイテッドの山崎健太はピチャの特徴について以下のように話す。
「技術が高く、攻撃センスもある。味方を使いながらスペースでボールを受けたり、そこから一人でゴールを狙ってくることもある。パタヤと試合をする時には最も気をつけなければいけない選手の一人。」
パタヤ・ユナイテッドはチョンブリ県パタヤを本拠地とするタイリーグの強豪クラブだ。今シーズンは第10節終了時点で7位につけている。
水戸ホーリーホック、ファジアーノ岡山でも活躍したキム・テヨン、ザスパ草津やガンバ大阪でも活躍したラフィーニャ、現役フィリピン代表の嶺岸光など豊富な外国人助っ人を抱えるが、彼ら強力攻撃陣の中でもピチャはチームの中心選手としてコンスタントに出場を重ねている。

拡大する東南アジアマーケットと増加するタイ人選手のJリーグ移籍
2012年より、アジアサッカー全体のレベルアップ、サッカー市場全体の中でのアジアの価値の向上、アジアサッカー市場の拡大、その中でのJリーグのプレゼンス向上のため「アジア戦略室」がJリーグ内に設立された。
そのアジア戦略が今大きく動こうとしている。Jリーグでのプレーを志すタイの選手達と、アジアでのビジネスチャンスを狙うJリーグのクラブ。両者の思いが、昨シーズンのコンサドーレ札幌チャナティップの活躍により、大きく交わろうとしている。
北海道のインバウド、タイ人観光客増加などチャナティップのコンサドーレ札幌移籍には明らかにビジネス面での期待が大きかった。しかし、そういった選手としての価値を懐疑的に見ていたJリーグファンをチャナティップは良い意味で裏切ってみせた。
チャナティップの活躍はタイ全土のテレビで放送され、日本でも活躍が大きく取り上げられた。次は我こそとJリーグ行きを目指すタイ人選手は増え、次なるチャナティップを獲得しようとタイに目を向けるJリーグクラブが増えるのは当然の流れだろう。

ピチャのJリーグ移籍はあるのか
ピチャは今回の練習参加に際して以下のように話している
「徳島ヴォルティスから練習参加の話を頂きとても嬉しいし興奮しています。今回の練習参加でたくさんのことを吸収して自分の経験、財産にしたいと思っています。
Jリーグについては、チャナティップ選手やティーラトン選手が日本でプレーするようになりましたし、同世代の選手がJリーグでプレーするのを見て、だんだん意識するようになりました。
今回の練習参加の目標としては、まず100%でプレーして、自分の良さを出すことです。そこから出た問題や課題を修正していきたいと思っています。」

また、今回ピチャの通訳兼サポート役として来日したパタヤ・ユナイテッドのフロントスタッフの木野村氏は以下のようにこの数日を振り返る。
「コミュニケーションの部分など苦労していることはもちろんありますが、攻撃だったり、技術的な部分では彼の良さが随所に出せていると思います。日本に初めて来てここまで出来るというのは彼の能力の高さを改めて感じました。また、日本食も美味しそうに食べていますし、徳島での生活も食事も楽しんでいるようです。」
納豆に挑戦するピチャ (映像提供:木野村公昭)
2017年に改定されたJリーグの外国人枠ルールも、タイ人選手のJリーグ移籍を強く後押ししている。
それはオーストラリアとスペインを除いた Jリーグとの業務提携国(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)の選手を外国人扱いから外すというものだ。
つまりタイ人選手は日本人選手と同じ扱いで試合に出場できるようになったのだ。
高い技術と敏捷性で攻撃に変化をつけることができるピチャのプレースタイルは、Jリーグでも十分通用するはず。
チャナティップ、ティーラシン、ティーラトンなどの選手達に続くタイ人Jリーガーにピチャもなることができるのか。是非、徳島で活躍する彼のプレーを見てみたいところだ。

