2019年3月3日
足早にピッチを後にし、ロッカーに引き上げる選手、勝利の余韻に浸り試合後のピッチでストレッチや談笑する選手。
そんな選手達から離れ、スタンドにいるサポーターとセルフィーを何度も何度も撮る選手がいた。”リソー”という愛称で知られるバンコク・ユナイテッド背番号14。ティラテープ・ウィノータイだ。
今やチャナティップと言えばJリーグに興味がある人ならば知らない人はいないだろう。
2012年からタイ代表に名を連ね、すでに代表50キャップを記録。東南アジア選手権(AFFスズキカップ)では2012年、2014年、2016年で優勝に大きく貢献し、2014年には大会MVPにも選ばれた。
2018シーズンにはJリーグベスト11にも選出され、今や名実共にタイが誇るスーパースターだ。
しかし、筆者にとってスーパースターという呼び方には一番リソーがしっくりくる。
2008年2月6日、埼玉スタジアムで行われたW杯アジア予選、日本代表とタイ代表の試合を覚えている人はいるだろうか。『なんだ、相手はタイか。今日は勝って当然だろう』くらいにしか当時の筆者は思っていなかったと思う。
他の人も同じような感覚だったはずだ。
結果は4-1で日本代表の勝利。しかしこの試合で一矢報いるゴールを決めたのが当時23歳のリソーだった。
縦パスから反転し、素早く振り抜いたボールはGK川口能活も触れることができない強烈な無回転ミドルシュートだった。敗れはしたものの、一時同点に追いつくこのゴールは強烈に印象に残っていた。
豪快なのはプレーだけではない。
スーパーカーを乗り回し、テレビ出演、サングラスとタトゥー、そしてきっちりとセットされたヘアスタイルがトレードマークだ。
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先日のバンコクユナイテッドのホームゲーム、True Stadium で行われたT1第2節バンコク・ユナイテッド対ムアントン・ユナイテッドの試合ではベンチ入りするも出場なしに終わったリソー。
この試合後、彼は相手サポーターがいるスタンドに向かい、1人1人丁寧にファンサービスを続けていた。
チームメイトはグラウンドで談笑していたり、ロッカーに引き上げて行くが、リソーだけは結局最後のサポーターとの写真を撮り終わるまで、20~30分ほどだっただろうか。笑顔でサポーターに向き合い続けた。
34歳の彼は絶頂期を過ぎた選手だ。しかし、それでも彼はピッチでのプレーはもちろん、サッカー選手として、そしてスターとしての振る舞いで、サポーターが憧れ、子供達が目標にするスター選手で有り続けている。
サッカー選手はピッチで結果を出すことが一番大事だ。しかし、スタジアムに足を運んでくれたサポーターを楽しませる、観ている子供達に夢を与える、という特別な存在なのだ。
カズやクリスティアーノ・ロナウドのように人から注目されることを理解し、ピッチ内外でプロフェッショナルとして振る舞うことのできるリソーはタイサッカーにとって貴重な存在だ。
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