3月9日、ムアントン・ユナイテッド対チェンマイFCの試合がムアントン・ユナイテッドのホームSCGスタジアムで行われた。
SCGスタジアム
バンコク中心部からは車で30~40分の距離にあるSCGスタジアム。高速道路の降り口からも近く、アクセスはかなり良い方。雰囲気は日本で言えば三ツ沢球技場のようなサッカー専用スタジアムと言えばわかりやすいだろうか。
ムアントン・ユナイテッド
タイリーグはブリーラム・ユナイテッドとムアントン・ユナイテッドの2強と言われているが、ここ数シーズンは圧倒的にブリーラムに負け越している状況だ。
2016シーズンはリーグ優勝を果たすも、その後、チャナティップ、ティーラトン、ティーラシンとった看板選手がJリーグに移籍した影響は大きく、今シーズンは2連敗スタートとなっている。
また、ガンバ大阪でプレーする青山直晃選手が昨シーズンまで所属していたことでも知られている。注目はベガルタ仙台、セレッソ大阪などでもプレーした経験を持つブラジル人ストライカーのヘベルチ。サンフレッチェ広島から復帰したティーラシンだ。

チェンマイFC
2018シーズンのタイリーグ2で3位に入り、初のT1昇格を果たしたタイ第二の都市チェンマイを本拠地とするチェンマイFC。注目はブラジル人CBのエブソン・パトリシオ。Jリーグではカマタマーレ讃岐、ガンバ大阪でもプレーした経験を持つ大型CBだ。もう一人は19歳のエカニット・パンヤ。U-23タイ代表にも名を連ねる期待の若手タイ人選手だ。
試合が始まり、主導権を握ったのは昇格組のチェンマイFC。ダヴィド・バラ、エリアンドロというゴリゴリ系ブラジル人ストライカーを最前線に、1.5列目にはアフガニスタン代表のムスタファを配置。
この3人にボールが入るとムアントンのDF陣はパワーで対抗できない。ロングボールも胸でコントロールされ、その後ろに構える若手のホープ、エカニットが中盤で巧みにボールをさばく。
チェンマイはとにかくこの3人を中心に攻め込む。
しかしいづれの攻撃も得点には至らず。
ムアントンはチィーラシン、ヘベルチ、コラウィット・テサーという3人が前線に構える。しかしゴールから遠い場所でしかプレーをさせてもらえず、チャンスはショートカウンターからの速攻という形が多かった。

しかし、この状況はチェンマイのキープレイヤーであるエカニットの負傷退場により徐々に変わっていく。
後半に入ると中盤でのボール支配率が明らかにムアントンが上回るようになった。
チェンマイの前線も疲れからかボールが収まらなくなり、エカニットがいないことでポゼッションが難しく押し上げがなかなかできない。ムアントンの前線の選手は自由に前を向いてプレーできる時間が多くなる。
そして先制点はヘベルチのサイドの突破から生まれた。
右サイドをドリブル突破したヘベルチから中で待ち構えるティーラトンにグラウンダーのクロス。鮮やかなゴールが決まりムアントン先制。
その後も攻め立てるムアントン。特にコラウィット・テサーの精力的な動きが印象的だった。ゴールこそなかったが、ゴール前でスペースに走り続け、決定的チャンスを何度も作った。

後半も最後になると、タイのクリスティアーノ・ロナウドと言われるイケメン選手、シャプイが交代でピッチに入ってくるといきなり仕事をしてみせた。
シャプイがサイドに流れ、ボールを受けるとそのままクロス。ボールは相手に当たるも、ハンドではないかとムアントン選手が猛抗議。
VAR判定に委ねられることになった。
審判の判断はペナルティーキック。
これをヘベルチが沈めて2-0。試合は2-0でホームのムアントン・ユナイテッドが今シーズン初勝利を飾った。

【ピックアッププレーヤー】
ムアントン
コラウィット・テサー
ヘベルチ、ティーラトンと共にムアントンの攻撃を牽引した。決定機を決めきれなかったのは残念だったが精力的に動き続け、チャンスを演出した。彼はまだ18歳。この歳でタイトップクラブで堂々とプレーしているのは驚くべきことだ。近い将来Jリーグでプレーすることも十分にあり得るだろう。

Đặng Văn Lâm
ムアントンが今シーズン獲得したベトナム代表GK。ベトナム代表での活躍で注目され、アセアン枠として今年タイリーグ初挑戦となった。ロシアとのハーフで188cmという恵まれた体格を持っている。しかしこの試合では1試合を通して不安定なプレーを披露。
アディソン・ポムラック
タイ代表DF。上背はないが対人の強さ、落ち着いたプレーが印象的だった。
チェンマイFC
ダヴィド・バラ
ブラジル代表フッキのような身体のゴリゴリ系ストライカー。実は筆者は彼とプレーしたことがあるが、びっくりするくらいトラップやパスといった基本的なことができない選手だった。しかし本人はそんなことに全く興味なし。ゴールさえ取れば良いんでしょ?と言わんばかりに試合に出るとゴールだけは取れる。そんなストライカーとして一番必要な強さを持った選手だった。
この試合ではボールも収まり、フィジカルでは相手の選手を寄せ付けない強さを見せていた。
エブソン・パトリシオ
190cmという体格を生かした空中戦の強さに加えて、足元の技術も非常高く、試合を通して高いパフォーマンスを披露した。前線にボールが収まらなくなると最後列からドリブルでボールを持ち出し、中盤や前線にボールを供給し続けた。
この結果、ムアントン・ユナイテッドは9位。チェンマイFCは最下位の16位となった。
次節、3月16日。ムアントンはアウェイでチェンライ・ユナイテッドと対戦。チェンマイFCはホームでラチャブリーと対戦する。