2019シーズン後期に向けタイリーグ2で首位を走るBGパトゥムユナイテッドはJFLの奈良クラブから小島聖矢の獲得を発表した。小島にとっては2018シーズンにウボンUMTユナイテッドで過ごしたシーズン以来となるタイリーグの舞台だ。
小島聖矢
タイリーグ屈指のクラブBGパトゥムユナイテッドへの移籍
正直言って決まるとは思っていませんでした。BGパトゥムユナイテッドからオファーを頂いてからも色々な事がありバタバタしていたのですが、たくさんの方々の協力のお陰でこの移籍が無事成立しました。
2018シーズン終了後はチームが決まらない時期が続きました
昨シーズン終了後、JFLの奈良クラブへの加入が決まるまで約半年もチームがない時期が続きました。正直、あの時期は苦しかったですが、あの時期があったぶん今回の移籍に関しても本当に嬉しく思っています。ウズベキスタンのクラブのキャンプ参加のためにドバイへ行ったり、JFLクラブへの練習参加、奈良クラブとの契約が決まった直後に来たカンボジアとインドネシアクラブからのオファーなど、2018シーズンの終了後から今までたくさんの事がありました。あの時、こうしておけば良かったなとか考えてしまうこともありましたが、それも全て今回のBGとの契約に繋がっていたのかなと思っています。

大学以来の日本でのプレーを経て再びタイリーグへ
タイリーグに戻ってくる事が出来て本当に嬉しく思っています。というのも奈良クラブでプレーしていた時は家族をバンコクに残して自分が単身赴任という形で奈良に行っていたんです。奈良クラブでプレーできたことは自分にとって本当に貴重な経験になりましたが、家族と離れて暮らすのはやはり辛い部分もありました。しかし、離れて暮らしていても奥さんがいつもサポートしてくれましたし、娘の存在もいつも自分に力をくれました。BGパトゥムユナイテッドはバンコクを本拠地にするチームですので、また家族と一緒に暮らす事が出来るのが何より嬉しいですね。
家族からの大きなサポート
BGパトゥムユナイテッドに移籍できた事で経済的にも余裕はできました。しかしうちの場合はお金に関しては奥さんが全て管理してサポートしてくれているので、自分はプレーのことに集中することが出来ています。本当に助かっています。今後は娘の学校の事もありますし、自分がサッカー選手としてもっと頑張って、家族のサポートに応えたいですね。
BGパトゥムユナイテッド
背番号は7番。初出場で初ゴール
個人的には8番を希望していたのですが、8番はレンタル移籍で大分トリニータで今シーズンはプレーしているピピパン選手の背番号だということだったので、7番にさせてもらいました。10番も空いていたのですが、少し自分のキャラとは違うかなと。
移籍してから3試合連続でスタメンで使ってもらいました。奈良クラブでは出場機会が限られていたので、試合感やスタミナの部分で心配もありましたが、移籍後の初出場でゴールを決められたことでだいぶ状況的には楽になりましたね。チームメイトも「おめでとう」「持ってるね」と温かく祝福してくれました。あのゴールでチームメイトみんなに受け入れてもらえた部分もあったと思います。

2位に17点差をつけて首位を走る
チームはやはりタイリーグ2の中では抜けた力を持っていると思います。だからこそ、絶対に昇格しなければいけないという使命を強く感じています。個人的に言えば10得点を目指しています。BGは得点力のあるチームですし、自分がしっかり試合に出て、やるべきことをすればそのくらい取れる得点チャンスは出てくるはずだと思っています。合流した当初はタイミングが合わない場面もありましたが、今はピッチ内での理解度も高まってきていると感じています。
チームメイトとの信頼関係は何より大切
タイ人はピッチ内だけではなくピッチ外での関係もすごく重視する傾向があります。なので、ピッチの内外で彼らの信頼を得られるようにコミュニケーションは大事にしています。一緒に食事に行ったり、下ネタを言い合ったりしながら楽しみながら関係性を築いています。
タイ人選手との関係は外国人選手なら誰もがぶつかる壁ではないでしょうか。やはり練習が始まるのが遅かったり、監督が練習に来ない、練習で激しくプレーしないなど、理解出来ない部分はどのチームであってもあります。しかしタイでプレーするのであれば、そこを自分の中で上手く処理して、彼らと良い関係を築くことができなければピッチ内でも上手く行かないでしょう。

タイリーグで活躍できる外国人選手
奈良クラブを経て、またタイリーグに戻って来て感じるのは、タイリーグで活躍している外国人選手は本当にすごいなということです。特にブラジル人選手のサバイバル能力は本当にすごいなと感じます。もちろん選手としての能力も高いのですが、彼らはここで生き残っていくために自分のスタイルでも平気で変えることができるんです。
柔軟にしたたかに環境に適応し、その中で自分の特徴をピッチ内で発揮する術を知っている。日本人選手の多くは技術的には上手いんですが、全て頑張ろうとして結局インパクトに残らない場合が多い気がします。ですので勤勉性が求められる中盤の選手は評価されやすいですが、ストライカーの場合は日本人にとって難しいのかなと思います。日本ではあれもこれもと求められますが、外国人として戦う場合は少し違います。自分に何ができて、何ができないのか、それをしっかり理解している選手は強いですね。
日本とタイでの違い
自分の試合への準備の仕方ですが、タイではいかに良い状態で試合に臨めるかという点を一番に意識しています。少しでも体調が悪いなとか、足が痛いとかがあれば休むことを優先するようにしています。日本であれば常に練習で全力でプレーすることが求められますが、タイでは練習を休もうが試合で結果が出ていれば何も言われません。逆を言えば練習でどんなに良いプレーをしてもそれが評価に繋がることは少ないと言えます。ですのでいかに試合で自分の最高のパフォーマンスを出せるか、その部分に全神経を注いでいます。もちろん練習は全力でやるべきですが、これは良い悪いではなく、そこの違いを理解して考えを適用する必要があったということです。
奈良クラブでプレーできたことは自分にとって本当に大きな経験になりました。攻守ともに本当に緻密で切り替えも速い。そのためスペースもほとんどなく、タイに慣れている自分にとっては自分の特徴を出すのが難しく感じました。試合になかなか出れなかった原因としては、自分が結果を意識しすぎたせいだと思っています。得点という結果が欲しいばかりにリスクを冒すことも多く、もっとチームとしてはチームのためにプレーできる選手が求められていたのかと思います。また、杉山さんが求めるプレーを自分が出来ていなかったのだと思います。
アユタヤでもお世話になった杉山さんに奈良クラブでまた指導してもらえた影響は本当に大きかったと思っています。杉山さんはパス1本、トラップ1つへのこだわりを強く持っている監督で、そういった細かいことが要求される奈良クラブでやっていたお陰で、BGに来てからすごい余裕を感じながらプレーすることができています。ラヨーン戦での初得点でも奈良クラブでプレーしていたからこそあの場面でも余裕を持ってシュートできたと思っています。

日本の選手達は技術的にはすごく高い。しかし海外で求められることはそれだけではない。
やはりJFLでプレーしていた自分がタイリーグに移籍することでJFLでプレーする他の選手も「自分もいける」と考えると思うんです。それは良いことだし、実際に能力の高い選手はたくさんいたと思います。しかし、良い結果が出ても悪い結果が出てもチームとして解決しようとするというか、そういう問題解決のアプローチをする選手が多かったように思います。海外で外国人としてプレーする場合には、良い意味でKYになる必要があると自分は思っているんです。結果が出なかった責任も、結果が出た原因も自分にあると考えることでもっと結果にこだわってプレーできると思いますし、そういう姿勢が求められていると感じます。
この感覚というのは自分の場合、海外でこれだけプレーしてきたから理解できたものであって、どちらが正解というものでもありません。しかし、どちらの考えも持ち合わせて、どちらも理解できるという柔軟さが大事だと思っています。
今年の夏はJリーグから多くの若い選手達がヨーロッパに移籍しましたが、それは本当に素晴らしいことだと思います。海外で外国人選手としてプレーするということはサッカー選手として本当に大事な感覚を教えてくれます。成功できるかどうかはわかりませんが、海外に出ることで成長が絶対にある。お金がないからとか、チャンスがないからと出来ない理由を探すのではなく、若い選手には成長のために海外にチャレンジして欲しいと思います。

今後に向けて
今はとにかくBGで結果を残さなければいけません。1試合1得点。そのくらいの結果を出せなければBGでやっていくことは難しいと思っています。来シーズンもBGの選手としてタイリーグ1でプレーできれば最高ですね。
この半年で本当に多くのことを経験することができました。クラブが無いという焦りばかりが募る時期を過ごし、奈良クラブでは試合に出れない、そして家族と離れて暮らさなければいけないという辛い時期を過ごしました。しかし、これまでの時間があったからこそ今があります。あの時に苦しい時間を耐えれたからこそ、人間的にも成長できるし、それがピッチでの結果にも繋がると信じています。
